新書『求人詐欺』

『求人詐欺 内定後の落とし穴』という新書本(今野晴貴著、2016年幻冬舎刊)を読みました。

求人情報には一見、好条件と見える条件を記載し、実際には劣悪な労働条件での就労を強いるケースがあります。著者は、これを「求人詐欺」と呼び、求人詐欺には「あいまい求人型」と「話が違う契約強要型」があるとしています。前者は、求人情報に賃金や労働時間、休日等について、詳細な情報を記載せず、不都合な事実を秘したまま就職させるもの、後者は、採用時又は採用後に求人情報の記載と異なる内容の契約書を提示し、署名させてしまうというものです。

 

私が担当している事件でも、たとえば、ネット上の求人情報では単に「月給○○万円」とあるのを見て入社したところ、給料日に渡された給料明細では、その一部が基本給とされ、一部が固定残業手当とされていて、残業代が一切出なかった、などといった例があります。これは、「『あいまい求人型』の『求人詐欺』なのだ」と考えると、妙に腑に落ちる気がします。要するに、自分が担当している事件は、巷に横行している類似の多数の行為(一部の企業が意図的に行っている犯罪的行為)の一例なのだ、と考えると、その事件のすべての事実経過が会社側の不合理な弁解まで含めて、ごく自然なものに思えてくるのです。

 

本書には、「求人詐欺」企業を見抜くための方策に加え、「求人詐欺」企業に就職してしまった場合の対策も論じられています。述べられている法律論はやや乱暴と思う箇所はありますが、概ね間違ったことは書かれていません。簡明な叙述は、一般の方にとって分かり易く、啓蒙書としては充分であるというべきでしょう。

「求人詐欺」企業のもとで劣悪な条件での就労を強いられている労働者が1人でも多く、本書のような良書を手にして法的なリテラシーを高め、自らの権利を守って欲しいと切に願います。