残業代に付される付加金とは何ですか?


使用者が残業代(労働基準法37条所定の割増賃金)の支払義務に違反した場合、裁判所は、労働者の請求により、未払いの割増賃金に加えて、その割増賃金(元金)と同額の付加金の支払いを命じることができます(同法114条本文)。

支払義務に違反した使用者に制裁を課すことによって義務の履行を確実なものにしようとする趣旨であり、残業代を請求しようとする労働者にとっては心強い制度ですが、以下の諸点に注意が必要です。

第1に、付加金の請求は2年以内に行う必要があります(同法114条ただし書)。この2年は除斥期間と解釈されていますので、時効のように中断(完成猶予)も認められません。すなわち、提訴の時点で支払日から2年以内の割増賃金についてのみ請求可能です。

第2に、付加金は未払割増賃金が認められれば当然に支払いが命じられるものではありません。裁判所が、使用者の労基法違反の程度・態様、労働者の不利益の性質・内容等諸般の事情を考慮して裁量によって付加金の支払いを命じるか否かを決定します。支払いを命じる場合でも、割増賃金と同額ではなく、その何割かの額を付加金の額とされることもあります。

第3に、事実審の口頭弁論終結時までに使用者が割増賃金を支払った場合、付加金の支払いを命じることはできないとするのが判例です(甲野堂薬局事件最判H26.3.6労判1119号5頁)。判例によれば、第1審の判決で付加金の支払いが命じられた場合でも、控訴審の弁論終結までに使用者が割増賃金を支払ってしまえば、付加金の請求は棄却されることになります。